2020.04.08
新入生の皆さんへ 学科長メッセージ
COVID-19から学んだことがあります。このウイルスは密集した集団を利用して生きているみたいですね。距離が近ければ近いほど、人間が群れているほどこのウイルスには都合がいいらしい。そこで私たちは、社会的距離をとる、各自の接触を避けるという方法で対応しようとしています。それは実際に効果を発揮しているようです。1.8 M の距離をとり、人と人がパラパラになることが効果を出しています。
改めて私たちは「個別」に立ち戻るのかもしれません。みんな行くから行こう、よくわかんないけど流れに乗ろう、という判断の仕方はだめなのかもしれない。
私はこの機会に、自分で考えて行動することは大事だなと改めて思いました。個人の弱さは悪いことではなく、そもそも弱さを補うために人間は集団を作るのだと思います。集団には家族から社会や国家まで様々なものがあります。体力的にも能力的にも、弱さを助け合うのと、単純に群れて行動するのは同じではないのですが・・・・・。
今、人間という生き物が試されている気がします。都市に集中して住むこと、地球上でここまで増えた人類が都市で密集する構造が試されてる。変化に対応できるか試されてる。そんな気がしています。生き残る方法として、私たちは新しい集団のあり方として、個の単位を取り戻すのかもしれません。デザインを学ぶ人には、自分で考えるということを身につけてもらいたい、目指してもらいたい。
改めまして、この大変な時期にようこそ。入学おめでとうございます。
大変な時期と言ってしまったけれど、何が起こるのか、何が変わるのかよく分からない、今までとこれからを大きく分けるくらいの変わり目だな、と私は思っています。皆さん、大学生になったこの年、今何が起こってるのかよく見ておいてください。よく感じてください。何が起こるのか、誰が何をするのか、何が変わるのか、よく感じてください。
見るとき、感じるときのコツを二つお伝えします。
一つ目は、いい悪いを先に決めておかないことです。最初に決めちゃうと、何が問題なのか見誤ることがあります。良い悪いを決めずに、ただ見て感じるのは結構難しいですけどね。
二つ目は、「なぜか」と理由を考えることです。デザインは問題解決だと聞いたことがあると思います。でもその問題はどこから来たんでしょう。問題を発見することも大事なんです。「なぜ」がわかったら、違う問題と繋がります。根っこが同じかもしれないからです。一つ目と繋がりますが、問題を見つける時には、個人や社会が既に持っている従来の価値観を一度取り外す必要があります。なんでだろうって考えながら、今何が起こってるか、誰がどうするのか、何が変わるのか、既成概念に囚われることなく、よく見て感じてください。
「なぜ」を考えるときには材料も大事です。理由を探るためには知識が必要です。疑問を持って理由を探る、その繰り返しが学ぶということかもしれません。大学は学び方を教えるところなので、一方的に何かを授けることはありません。私たちは皆さんと知識を分かち合い、一緒に考えるパートナーなのです。自分で学べるようになるのが大学です。いろんなニュースを見て、おかしいなあ、オトナは大したことないなあ、と思っているとしたら、大丈夫、学ぶ準備はできています。
いろんなことがこれから変わるでしょう。変わる事は怖いかもしれませんが、変化って面白くないですか?いい方に変わるかもしれないという期待、今までと違う事が存在できるっていう可能性にワクワクしませんか?それを見つけるのも芸術やデザインの大事なはたらきだと思います。そもそも人間が作ったことで、変えられないことなんてないんじゃないでしょうか。みんなはデザイン学科に来た。変える側になる、その入り口に来たんです。一緒に頑張りましょう。
名古屋学芸大学メディア造形学部デザイン学科
学科長 冨安由紀子
2020年4月3日